乃南 アサ

結婚詐欺師〈上〉新潮文庫
結婚詐欺師〈下〉新潮文庫
橋口雄一郎は40代のプロの結婚詐欺師。
カツラ・洋服・職業・車を使い分けて変身、
女性の心理を逆手に取る巧みな話術で誘惑し、
金をだまし取っていた。
東京・小滝橋署の刑事、阿久津は偶然かかわった
結婚詐欺の被害届から、プロの匂いを感じ取り捜査を始めた。
やがて松川学という前科者が浮上、身元の確認に追われる。
一方、橋口はゴルフ練習場で見つけた女性に
次の狙いを定めた―。


結婚詐欺師の手口ってどんなの?という好奇心で
この本を手に取ってみました。
このような人につかまったら
わかっていても、はまっていくものなのかもしれません・・・。
怖い〜。
「あばたもえくぼ」といいますが、恋愛に陥ってしまった
彼女たち被害者は真実を見ようとしない。
見つけても見て見ぬふりをする。
自分の知り合いがそんなプロの手にかかったらと思うと
怖い作品でした。

新潮ミステリー倶楽部
「音道貴子シリーズ第3弾.
霊感占い師ら4人の惨殺死体が発見された。
捜査本部に加わった警視庁機動捜査隊・音道貴子刑事は、
捜査一課の男性刑事と組んで捜査を開始。
しかし、ペアとなった彼は出世志向が強いうえ、
公私の区別もつかない愚か者だった。
そんな男と組んだばかりに、音道は単独で行動する羽目になり、
結果、犯人捜索中に誘拐・監禁されてしまう。」

実社会でもどうしてこんな人が上司?と言うような人も
やっぱりいる。
そんな人につきあって危険な目にあい、自分自身と戦いながら
冷静に分析したり、諭したり、時には警察自体も信じられなくなり
このまま犯人を自由にしてしまおうかとさえも考えたり。
そんな音道刑事の最後まであっぱれな姿には
女性だから、男性だからというよりも、
人間的にかっこよかった。
長編ながら、1作目よりもストーリー展開がおもしろかった。
紫蘭の花嫁
文春文庫
「あいつから逃げなきゃ!」執拗に追ってくる男の影に
脅えつつ、逃亡を続ける花屋の店員、三田村夏季。
同じ頃、神奈川県下では不可解な連続女性殺人事件が起こり、
刑事部長・小田垣の苦悩の日々が始まった…。
追う者と追われる者の心理が複雑に絡み合い、
やがて衝撃のクライマックスへ。傑作長篇ミステリー。


この本も思っていたよりもずっと、おもしろかった!
ただの結婚前の女性のちょこっとした冒険ストーリーかと思ったら
考えられた文章構成で、驚きのお話だった。
犯人は誰なのか?
この人は本当は誰なのか?
犯人はつかまるのか?
最後まで気を抜けないストーリー展開はドキドキもの。
お薦めです。
不発弾
講談社文庫
退屈な日常がキレる。怒り、殺意、逆襲…。
ひそかに炸裂の瞬間を待つ都会人の心の中の不発弾。
新しい都市伝説を描く傑作作品集。


乃南さんの本ではじめてこれは男性にもおもしろいと
勧めることが出来る作品だな。と思った。

「かくし味」や「夜明け前の道」では・・
仲間っていいな。そんな居心地のいい空間って
うらやましいな。と思えるお話。
「夕立」は男の人にとっては怖い話だよね。
もし、あなただったらどうする?
「福の神」・・・誰があなたにとって福の神かわからないよね
というお話。
「不発弾」をかかえている世の中の男の人は
多いのかもしれないな。
この話を読んで、乃南アサさんが心理描写が
うまい。と、書かれている理由なんだな。と納得。
「幽霊」は窓際に追いやられたお父さんに送る
エール(応援歌)というところかな。
全体的にタイトルの強さとは逆にのんびり読み終えることが
できた本でした。男性にお勧め。

女刑事音道貴子
花散る頃の殺人
新潮文庫
『凍える牙』で、読者に熱い共感を与えた
女性刑事・音道貴子。彼女を主人公にした初の短編集。
貴子自身がゴミ漁りストーカーに狙われて、
気味悪い日々を過ごす「あなたの匂い」。
ビジネスホテルで無理心中した老夫婦の、
つらい過去を辿る表題作など6編。
家族や自分の将来に不安を抱きつつも、捜査に追われる
貴子の日常が細やかに描かれる。
特別付録に「滝沢刑事と著者の架空対談」。」

これは凍える牙を読んで、この女性刑事、音道さんに
興味を持った方が読むことをお薦め。
短編なので、ストーリーに迫力はあまり感じられないので。
凍える牙
新潮文庫
深夜のファミリーレストランで突如、男の身体が炎上した!
遺体には獣の咬傷が残されており、警視庁機動捜査隊の
音道貴子は相棒の中年デカ・滝沢と捜査にあたる。
やがて、同じ獣による咬殺事件が続発。
この異常な事件を引き起こしている怨念は
何なのか?野獣との対決の時が次第に近づいていた―。
女性刑事の孤独な闘いが読者の圧倒的共感を集めた
直木賞受賞の超ベストセラー。


最初に読み始めたとき、宮部みゆきさんがよく
書いているような超能力ものかと、思いました。
でも、それは早合点。
とにかくこの小説の他の小説にみない
すごさを感じることができたのは、
「ウルフドッグ」の存在抜きには語れない。

ストーリー自体は今ひとつなのに、このウルフドッグが
入ったことで、この小説にきらりと光るものが
入ったことは間違いない。

犬好きの人間ならこの疾風(はやて)というウルフドッグに
心奪われずにはいられないかも。
そう言えば、むつごろうさんで「オオカミ犬」の特集を
見たことあったな・・・。

さすが代表作、皆さんも読んでみてね。
夜離れ
幻冬舎文庫
追えば逃げる。待てば忘れられる。
だからなおさら、花散るまえに、
あなたの視線に溺れたい…。
自分を見つめつつも、流れにあらがえない
女性心理を描いた6編。


4℃の恋
祝辞
青い夜の底で

枕香
夜離れ

仲のいいはずのお友達が結婚する。
それがショックで失語症になってしまう長坂朋子。
結婚式のスピーチではそのお友達の真実を
ぶちまけてしまう・・。「祝辞」はあり得そうなお話。

「青い夜の底で」はストーカーのお話。
「髪」は女の情念やら執念やらどろどろしたものを
軽いタッチでさらっと書いていて、これまた
あり得そうで怖い・・・。
「枕香」も「夜離れ(よがれ)」もあり得そう。
女性ならきっと似たような経験を持つ人も
多いのではないかしら?それと似たようなことでも。

ここに出てくる女の人たちの性格はいいとはいえない人が
多いし、自業自得でしょ。と思えるけれど、
すぐ隣は闇。
と言う言葉がぴったりな現代ホラー?ストーリーでした。
OLさんに通勤途中用にお薦めの本です。
ヴァンサンカンまでに
新潮文庫
この本は主人公 翠(みどり)の恋愛体験記という感じで
ふ〜ん・・・。
彼女にはあんまり感情移入できないけれど、
こういう人もいるんだろうね〜というお話。

「社内不倫と社内恋愛の同時進行―
―OLの翠は欲張った幸せを掴んだが、満たされない。
本当の愛の形に気付くまでのちょっと切ない物語。」

主人公のしたたかさに感情移入出来ない人が
多いのでは?
誰もがうらやむ恋人を手に入れ、(しかも彼の前では
煙草を吸わなかったり、お酒の弱い振りをしたり、
セックスも初めてだとうそをついたり、その辺が
女に嫌われるナンバー1な理由)
その上、上司と同時進行。
高いブランド品も豪華なお食事もいいとこ取り。

同期の女の子達にはそれぞれ、いい顔をしながら
不倫をしている女の子を見下げ、同期とつきあった
女の子はおとしめる・・・。

そんな主人公はやっぱり幸せは訪れなかった・・。
6月19日の花嫁
新潮文庫
この本もおもしろくてはまった〜。
乃南アサさん、いいね〜。おもしろいよ。

「わたしは誰―?6月12日の交通事故で記憶を失った千尋。
思い出したのは、一週間後の19日が自分の結婚式
ということだけだ。相手は一体、誰なのか。
"自分探し"を始めた千尋の前に、次々と明かされる
予想外の事実。過去のジグソー・パズルは埋められるのか…。
「結婚」に揺れる女性心理を繊細に描き、
異色の結末まで一気に読ませる、
直木賞作家のロマンティック・サスペンス。」


今回も軽妙な軽いタッチで描かれていながら
驚くべき真実に「え?」とさせられました。

3度も記憶を失うってそんな話、初めて。
次々と証される真実に自分を失っていたとはいえ、
呆然とする主人公。
記憶を失うごとに新たな人格が構成される。
最初に記憶を失った理由もなかなかそんな話ある?ていう
感じだけど、そんなことがあったら恐ろしいわ。

女性にお薦めの一冊。
暗鬼
角川文庫
この本はおもしろかった〜。

親子四代、総勢九人という現代では珍しい大家族に
嫁いだ法子。まだ他人の法子にとって、初めて知る大家族とは、
暖かくお互いが理解し助け合う最高の絆であった。
だが、ふとしたきっかけから、法子は家族の表面的な
優しさの奥に潜む奇妙な人間関係、謎の多い行動に気付き、
ひとり調査を始めた―。
"本当の家族になりたい"と切に願う法子によって、
次々と解き明か
される家族とは・・・。

というサイコミステリー。」

実際に起こってもおかしくない話が背筋を寒くする。
洗脳とはこういうことを言うのね、きっと。
疑問に思っていたことなのに、毎日の生活の中で
見てみないふりを重ねていく。
怖いけれど、恐いもの見たさで引き込まれてあっという間に
読み終えてしまった1冊でした。
躯(からだ) 
文春文庫
お友達のいっちゃんにお薦めされて初めて
乃南さんの本を読みました。
いっちゃんはこの作者の特長は最後の展開が
予想がつかなくて面白い。と言っていたの。

「この本はお臍の整形手術を娘にせがまれた母親。
女性の膝に異常に興奮する中年サラリーマン。
頭髪を気にして怪しい育毛剤に手を出した青年。
「アヒルのようなお尻」と言われた女子高校生。
顎を殴ることに魅入られたプータロー。
日常が一瞬にして非日常に激変する「怖さ」を
描いた新感覚ホラー小説集。」

となっていて、現代の問題を取り上げているのね。
と、軽い気持ちで借りてきました。
文章がわかりやすいので、あっという間に読めました。

一番「おお〜」と思ったのが、最初の作品「臍」
最後の落ちが、もの悲しい現代の悲しみを
説いていた・・・・・・。
そう言えば、脳梗塞で亡くなった小渕首相。
このとき、脳梗塞が起きる前の変調を新聞などで
良く目にしていた。
このお父さんもそうだったんだな〜。とわかった。
それにしても、
体調の変化にも気づけない家族。
整形したのに気がつかないのは自分たちに関心が
ないからだと思いこむ家族。
愛が足りなかったのは家族の方なのかも・・・。